お知らせ

「峨駒の古典的スピーカーの調べ」は”木下惠介記念館”で行っております。
こちらのブログは技術的な記事に限定して書いておりますので、以後、イベントのお知らせはこちらのページにて行います。古典的スピーカー+墨汁抵抗+ECMフォノピックアップ

当ブログは作者「峨駒」のオーディオ技術メモです。
主な内容

2015年10月12日月曜日

フォノピックアップ、墨汁抵抗、PPフィルムコンデンサ

MEMSフォノピックアップ


MEMSフォノピックアップはあれから増殖を続け、もはやECMフォノピックアップは隅っこに放置されている。WM-61Aは30個ほどあるが、これももう使う事はないかも知れない。

実験で分かったことをまとめておこう。
先ず、f特性は関係ないという事。
f特の良いマイクはまだ値段が高いので、敬遠する。
そして、ダイアフラムの大きさによって感度が変化する事。
ダイアフラムの面積が2分の1になると、出力は2倍になる。

最近使ったものは


値段も2個で260円とかなり安い。

そしてこれは感度が高い。(ここでいう感度とはピックアップとして使ったときの出力感度、
マイク単体での感度はユニティーゲインで-42dBと他のマイクと変わりない。)
つまり、ダイアフラムが小さいという事。
まだ分解していないので詳細は分からないが、そのうちやろうと思う。

*後ほど分解して調べたが、ダイアフラムはSPU0409HD5H(PB-7)やSP0103NC3-3とさほど変わりなかった。
JL-M2417Aは-36dBなのに出力はむしろ小さくなる。
SPU0414HR5H-SBはプレスで蓋を作ってある。
どうもここら辺が関係しているようだ。






感度が高いことは歓迎すべき事だ。
今は若干使い勝手が悪いが、アンプのゲインを小さくすれば何の問題もない。
小径ダイアフラムの方が微小信号への反応も良く、SN比も良い。

今までに使ったMEMSマイクの中で最も安いしf特もかなり荒れているが、これが一番良い音だった。

ただし、SPL115dBで歪率が10%だから、そこだけ注意が必要。
出力が大きくなるという事は、ダイアフラムにかかっているSPLがそれだけ大きいという事。
このピックアップは空気をいくらでも圧縮できるので、必要以上に圧縮比をとらない事が重要だろう。

空気穴の位置をあわせるために紙のガイドを先に接着し、後に本決めする。

やはりエポキシ系接着剤をてんこ盛りにする。これをやるのとやらないのでは、音の厚みが大分違う。

墨汁抵抗


硬化した(一度乾いた)墨汁は抵抗値がとても安定してる。

今まで両サイドのカシメはスズメッキ銅線を使ってきた。
これは、裸銅線だと表面が酸化して抵抗値が変わるためだ。

だがここにきて墨汁の安定性を再認識した。
完全に乾いた墨汁紙紐、後にオイルを染み込ませる。
全く抵抗値の変化は認められなかった。

ならば、裸銅線を使って両サイドをカシメ、さらにオイルを塗布すれば、問題は解決だ。
裸銅線はホームセンターの園芸コーナーにある。値段もスズメッキ銅線の3分の1だ。
何より、メッキ線特有のキラキラした色付けが無いのがうれしい。



PPフィルムコンデンサ


最初の頃は無誘導巻きにこだわっていたが、ここはこだわるべき所ではないことに気づいた。
無誘導巻きは巻く段階でずれてリークしてしまわないように気を使い、高密度で巻くことが出来ない。
高周波を扱うわけでもないので、誘導成分があっても良いだろうという事で。。。

それで、この写真。
同じ容量のコンデンサだ。
銅箔の面積も5分の1程度になった。
箔の面積が小さいという事は、それだけ湿気や外的圧力で絶縁性能が落ちる可能性も少ない。


更にPPフィルムの隙間にオイルを染み込ませる。
容量は約2倍になる。
オイルコンデンサの絶縁性能が低かったのは、オイルが低いのではなく、紙が低いのだ。
PPフィルムコンデンサのオイル入りは手巻きとしては極めて高い絶縁性能がある。
正確には測れないが1nF当たり数GΩ~数十GΩはある。




音作りを部品に頼らないために私が最も重要視していること。

出来るだけ自然素材を使い制作する。

出来るだけ普通に手に入るもので制作する。

秋葉原に行かずとも、ホームセンターや通販で間に合うような制作方法を考える。

評判の良い部品は使わない。

一番ベーシックなものを選択する。

ベーシックなもので自己表現出来るのならば、評判の良い部品、高級な素材は必要ない。返って邪魔になるのだ。

2015年9月20日日曜日

展示イベント開催のお知らせ

*お問い合わせ先のメールアドレスが間違っております。
正しくはmiyajimamerondtcです。

2016年、2月7日
鴨江アートセンターにてオーディオ部品の展示イベントを行う事になりました。


とは言っても、部品を並べて展示するのが主です。
アンプやスピーカーを持ち込んでの試聴はまだ用意できませんので、あらかじめご了承下さい。

それで、今までに作った物を少し整理して投稿したいと思います。

先ずは手軽なところで、墨汁抵抗器です。

これは2014年の夏頃から形になったものです。
硬化した墨汁は一定の抵抗値で安定していることから、自作の抵抗器を作れないか?と考えたのが始まりです。
そして、試作第一号にして市販のカーボン抵抗や金属皮膜抵抗をはるかに超えてしまったのです。
静かで上品で、ガサガサしたところがなく、それでいて弱くもない、兎に角最高の結果を得たのです。


これが、初期に作った墨汁抵抗器

次に、というか抵抗器とほとんど同時進行で開発していたのが、オイル、フィルムコンデンサです。
私のポリシーとして、出来るだけ自然素材を使う事、それが叶わない場合どこにでも売っている普通の素材を使う事、この2点です。
当初、ロウ引きの和紙などを使ってみたりしましたが、リーク抵抗が低すぎて使いずらいものになってしまう事は避けられませんでした。
セパレーターには本来絶縁体を使うべきだが、天然素材では微弱に電気が流れる事があり、それがもとで直流電圧が漏れ出すことが有ります。このようなコンデンサをカップリングに使うと次段のバイアスが浅くなり、アンプが熱暴走を起こす危険性があります。

安全策をとり、カップリング用コンデンサはppフィルムを採用しました。
とは言っても、百円ショップで売っているクリアファイルです。(どこにでも売っている素材)



こちらは、今までの墨汁抵抗器とフィルムコンデンサの制作、実験の記録です。

カーボン抵抗、オイルコンデンサ自作(始まり)

カーボン抵抗とオイルコンデンサ自作その2

アンプ制作


さて、そしていよいよ肝心のピックアップ(自作カートリッジ)です。

これは2011年から研究開発に取り組んでおります。
先ずは最も初期の頃の写真をご覧ください。



この画像が一番分かりやすいです。
コンデンサマイク(ECM)にキャップのように被せて、前面の膜に音溝の振動を入力します。
ちょうど紙コップの糸電話のようにビリビリと膜が振動し、それをそのままECMが電圧として出力します。
確かに、このピックアップは音が歪んでいたり、いろいろ問題点もありましたが、とても生命力のあるしっかりした音が出ていました。

最も初期のコンデンサマイクのピックアップ

それで、色々な方式のピックアップを試作しました。

思い返せばトラブル続きだった。本当に実用になるカートリッジが出来るのか、半信半疑でした。


現在は適正針圧は4gでトーンアームにも巨大な質量は必要とせず、使い勝手も十分です。(LPに負担を掛けません)
ステレオ音場は狭いものの、はっきりとしてメリハリのある音味で、それでいて中抜けせずに力強い中音域の押し出し、ボーカルやバイオリン、ピアノがぐっと前に出てくる感じに仕上がっております。ポップスなどはやや派手な印象を受けます。クラシックやジャズは古い音源から、70年代まで、それほどナイーブに選ばず再生出来ます。




これが、現在使っているピックアップです。
MEMSマイクを使っているので、MEMSフォノピックアップと命名しました。

ECMフォノピックアップシステムの新たな展開(MEMSフォノピックアップ)

コンデンサを使った発電は、振幅比例型発電なので、フォノイコライザーアンプは必要ありません。
厳密に言えば、振幅比例型のイコライジングアンプが必要なのですが、(コイル発電の場合とは逆になり、わずかにハイを持ち上げるイコライジング)RIAAのように大規模なイコライジングではありませんので、音質劣化の心配もありませんし、そのままフラットなマイクアンプで増幅しても違和感なく聴くことが出来るレベルです。
つまり、フォノアンプのついていない普通のミニコンポなどでも十分楽しめるという事です。

イベント当日はこれらの項目に絞ってお話ししようかと思っております。
かしこまったイベントではありません、ゆる~い感じのイベントです。一日展示する予定で、私もそこらあたりをウロウロしています。井戸端会議的に情報交流出来たらよいな、と思っております。

それでは、当日にお会いしましょう。

2015年8月11日火曜日

ECMフォノピックアップシステムの新たな展開

Panasonic WM-61Aの製造が終了してから1年弱、在庫はかなりあるとされていたが、ふたを開けてみれば数か月で売り切れた。当方は少し多めに買っておいたのでまだ大丈夫だが、いずれは無くなる。他のECMを使うにはもう一度音響的に設計し直す必要がある。そして新たなECMを見つけたとして、それもまた何れなくなるだろう。世の中はコスト削減のニーズを受け、メカ的な制作工程を有するECMよりも、MEMSマイクに主流が移っている。MEMSとはMicro Electro Mechanical Systemsの頭文字で、半導体集積回路の技術から生まれたものである。極微小な機械構造をシリコンウエハにプリントして作成する技術だ。これにより圧力センサーやジャイロスコープなど、メカ的動きが必要なデバイスを1チップに集積可能になったわけだ。

このMEMSマイクを導入することによってECMのメカ的バラつきから解放され、フォノピックアップ本体の音に忠実になるわけで、メリットは大きい。
そして何より、今後活躍するであろう先端技術を使う事、それは私にとってスマホやタブレットを買う事ではなく、この原始的なフォノピックアップに活用する事だ、つまりハイテクとローテクの融合、テクノロジーとアートの融合であり、どちらか一方が優位に立つのではない。どちらも主張して、どちらも主体的にふるまう事が最も重要と考えている。


さて、今までのECMフォノピックアップは直径6mmのECMを使っていた。
最初から予想はしていた事ではあるが、空中の音と違い限られた空間では限られたエネルギーしか存在しない。圧力エネルギーは当然だが拡散すると弱くなる。つまり、口径の小さなマイクほど大きな信号電圧を出力可能という事。

今回買ったマイクは次の3つ

SP0103NC3-3 秋月電子

SPU0409HD5H(PB-7) 秋月電子

JL-M2417A マルツ電波




一枚目のSP0103NC3-3は第一世代MEMSマイクで直径1,9mmの振動膜を持つ。
http://akizukidenshi.com/download/sp0103nc3-3.pdf

感度はプリアンプ付で-22dB、ユニティーゲインの場合は-42dB
WM-61Aが-35dBなので、まずはそれに近いところから始めたい訳だが、-42dBでも問題ないだろうから、簡単な接続で試した。予想通り、それほど出力電圧は低くない。 SPL音圧相当で考えると振動膜が小さくなった分出力が大きくなったようだ。

そして音だが、なんとなんと、すでにWM-61Aを凌いでいる。
少し硬い音で、ドンシャリ傾向ではあるが、音響的に煮詰めていけば問題はないはず。
基板が薄いので圧力が逃げないよう、上からエポキシ系接着剤を盛り上げた。中抜け感はやや改善された。


 こちらが、SPU0409HD5H(PB-7)
http://akizukidenshi.com/download/SPU0409HD5H-PB.pdf

第3世代のMEMSマイクで直径は1,1mmの振動膜を持つ。
計算上は振動膜の面積が半分になれば、SPLは2倍になるはず。
所が面積比ほどの出力電圧は得られていない。
この機種も-42dBだが、第一世代MEMSと同じレベルだ。



JL-M2417A
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/223429/

これはさらに小さい、ただ、分解して中を調べたが、振動膜は第3世代のようだ。
そして特徴的なのは完全なゼロハイト構造という事。
マイクの蓋、というか底というか、写真の裏側、ここはシリコンウエハーその物であり、割れやすい、扱いが難しい。ゴマ粒大の大きさのユニットに3本のリード線をはんだ付けしなければならないので難易度トップクラス。
音は、真ん中が張り出した感じで、上の2つと比べるとかなり違う。ゼロハイト構造が影響しているに違いない。ゼロハイト構造が、というよりゼロハイトにしたことによって、振動膜の内側の空間体積と外側の空間体積のバランスが変わるからだ。データシートを見ると8kHzにディップがあるが、これはマイクとして使った時のデーターなので今回の結果は無関係と思われる。

総じて、振動膜は小さければ小さいほど良いと言える。
マイクとして使ったときでも現れると思うが、フォノピックアップは圧力センサとして使っていて、さらに効果は大きい。

因みにMEMSマイクは、周波数特性がまだまだ狭い。だがこれはマイクとして使ったときの話。
電気的にf特が悪いのではなく、音響的に悪いのだろう。スマホに搭載するのを基本に設計しているから、とても薄く作ってある。だが、密閉空間ではそれは関係ない。嫌が上でも振動膜は動かされるからだ。つまり、現状のf特の悪いマイクで十分という事。
フォノピックアップのために有るようなもの、という気がしてきた。

これからの展開が楽しみである。

そうだ、これはECMを使っていないので、名称も変えるべきだろう。

MEMSフォノピックアップにしよう、そのまんまだけど。


MEMSマイクの第1世代~第4世代の画像
参照http://eetimes.jp/ee/articles/1104/01/news042.html


MEMSマイクの内部の画像(分解はしたが小さすぎて写真は取れないのでウェブ画像を拝借、機種は違います)
参照http://www.eetimes.com/document.asp?doc_id=1324827


追記

MEMSマイクはICなので電圧ショックでよく壊れる。
まだ扱いが慣れていない事もあって、かなりの数をすでに壊した。壊したものは、お楽しみの分解観察に回される。すべて分解した結果、第一世代も第三世代も振動膜の面積はそれほど変わらない事がわかった。1,9mmや1,0mmと書かれているが、これはチップ全体の大きさであった。そうであれば、第一世代であるSP0103NC3-3と第三世代であるSPU0409HD5H(PB-7)の出力レベルが同じであったことの説明がつく。

原因不明のノイズに悩まされているので、あれこれいじっている。まだまだ壊すだろうから、ある程度まとめ買いした方がよさそうだ。